まもなく本格的に本番に向けての稽古に入る前に、
より実践的に演技の課題に向き合ってみて、
これからの稽古を進めるにあたってのヒントを見つけるための
ワークを行いました。
講師には、俳優の二口大学さんにお越しいただきました。
まずは、「タオルバレー」から。目標はトス100回。
簡単に思えますが、これがなかなか続きません。
誰かに任せて引いてしまったり、集中が切れて身体の準備ができていないと
ボールは簡単に落ちてしまいます。
ボールをどう受け止めて回すと相手が受け取りやすいか、のコツもあるようです。
一緒にいる人と、どこに飛んでくるかわからないボールを全力でつなぎ続ける。
まさに舞台上の俳優の仕事です。
そのあと行った「ポーズまわし」もジェスチャーゲームも、
キャッチし続ける集中力を大切にした時間だと思いました。
アクションそのものよりも、それを瞬時にキャッチして誰かに明確に渡していく。
なおかつ全員で時間の流れを止めずに共有していく、ということも
「タオルバレー」から一貫してつながっています。
それをふまえて、テキストに取り組んでみました。
二口さんが数年前ツアー公演で何度も上演を重ねられた作品の冒頭の一節です。
最初に二口さんの持ってこられた台本の原本を見せてもらいました。
無数にフィードバックや解釈が書き込まれ、印刷の文字が消えるほどに擦り切れて、
もはや古文書かと思われるような、稽古の日々が映し出された台本の風情でした。
「これが役者の台本です」
2人組になって練習をしてみて、最後に発表します。
これまでのテキストを使った創作と違ったのは、自由な解釈を”広げる”楽しさという
よりも、本にあらかじめ書かれた設定や人間関係をふまえて相手役と向き合い、
”深く掘る”ことを重視した時間だったように思います。
自由な解釈も創作の楽しみですが、あえて設定の枠の中で自分から出てくる表現に
向き合うということも、演劇の醍醐味であることを教えていただきました。



参加者からは、
「伝えようとしても伝わらない難しさ」
「お客さんに伝わる表現になるためにはどうしたらいいんだろう」
という感想が聞かれました。
二口さんはまだその答えを探して俳優を続けておられるんだろうなと思いましたし、
その背中こそが今回のワークショップで得た学びだなと感じました。