第30弾は、萩原さんのビギナーズ体験です。
萩原さんは15期(2008年)のビギナーズ受講生で、
あごうさとしさん演出の101号室公演「僕の東京日記」(永井 愛作)に
役者として出演されました。
今でも思い出すのは本番中だ。
あの感覚は忘れられない。
本番中、何も考えていなかった。
唯一注意していたことといえば、セリフをはっきり言うこと、それだけだった。
あとは何も考えていなかった。
けれども、こう動かなければとか、こう言わなければとか考えることなく、
自分の演技はなぜか自然に出てきた。
予定調和のことをやっているにも関わらず、そういう感覚もほとんどなかった。
そして、そんななぜか新鮮な空気のある劇空間にいるのが心地よかった。
でも、そういう風な感覚を味わえたのにも理由があると思う。
ビギナーズが始まった当初、とにかく自分はいい演技をしようとか、
いい俳優になりたいとか、そんなことばかりを考えていた。
要は自分のことばかり考えていた。
だがそれは、お互いのコミュニケーションの上で成り立っている
演劇において通用しなかった。
だから相手について考えた。
とことん議論もした。
お互い何を考えながらやっているのか共有するように心がけた。
今まで、このビギナーズユニットほど相手について考えたこともなかった。
自分がいかに相手を理解したつもりになっているだけだったのかを思い知らされた。
そして、講座が進むつれ、相手を思いやる上で自分のことを考えるようになれた。
これは、ビギナーズユニットを始める前の自分に比べて
革新的な変化だったと思う。
自分が本番であのような感覚で演じることができたのも、
いつも自分本位でしか考えられなかった自分が、
他のメンバーの存在も感じながら考えられるようになったからだと思う。
つまり、相手が提示してくれるものを受け取れるようになったのだと思う。
受け取ることは、自分の演技が相手に引き出されているという感覚に近かった。
今回のビギナーズユニットの経験は、振り返ってみると自分にとって、
今までで一番といっていいほど、貴重な経験だった。
いかに自分が相手とのコミュ二ケーションが取れておらず、
相手に一方的に自分の考えを押し付けていたかを、気づかせてくれたからだ。
萩原秀樹


