「コミュニケーション」のワークショップ。
講師は、教育ファシリテーターの岡野真大さん。
テーマは「合意形成」。
意見を合わせて形を成す、ということ。
これは、演劇創作の現場で、
特にビギナーズユニットでは最も求められるスキルです。
劇団、あるいはある企画のために集められた
プロダクションによるプロデュース公演では、
モチベーションや目的がある程度
整えられている集団でのクリエーションになります。
しかし、ビギナーズユニットは、
必ずしも「演劇をやりたい」と思ってきている人ばかりではないので、
モチベーションも目的もさまざま。
にもかかわらず、最終的には一つの作品を創りあげていく。
その過程で、どうやって「合意形成」していくのかは、
集団創作のポイントとなります。
いきなり「合意形成」についてやります、ではなく、
講座は「まずはみんなが、なんとなく
楽しくなるようにしましょう」というテーマで始まりました。



さまざまなゲームを楽しみながら、
コミュニケーションについて実体験していきます。
例えば“グルーピング”。
15秒以内で、好きな色が同じ人、
電話番号の末尾が同じ人・・・などとグループになります。
最初は言葉を介して。
次に言葉を介さずに。
最後は身振りも手振りもなし、瞬きの回数だけでコンタクトしました。
あるいは“デートゲーム”。
月曜日から金曜日までのデートの相手を決め、
それぞれの曜日毎にあるテーマについて話し合って自己紹介をします。
例えば、最近一番楽しかったこと、
これまでに見た演劇で最も面白かったもの、など。
その後、相手のことについてみんなに紹介をする、というもの。
そして最後にやったゲームは、4人ずつのグループに分かれて、
宇宙人に“ペン”を説明する、というゲーム。
かろうじて日本語は理解出来るけれど、
“ペン”そのものを知らない人に、概念そのものから説明する。
宇宙人役のボランティアスタッフが、
理解できたかどうかを判断しました。
さまざまなゲームを経て、最後にワークショップを振り返ります。
岡野さんから、「合意形成」に必要な要素についての説明がありました。
まずは自分。自分のことを正しく理解する。
次に他人。他人のことを知り、分析し、理解しようとする。
そして目的。共通の目的を共有する。
そして最後に、最も必要なこと。それが雰囲気(空気)。
自分と他人とが到達しようとする目的へ向かうための“風”です。
雰囲気(空気)は、最近よく言う「空気を読む」という時の
「空気」とは、ちょっと異なっています。
自分を守るために遠慮したり、他人をおもんばかって遠慮するのではなく、
その集団の中で、自分がいて、他人がいて、目的があり、
どういう“風”が吹くとその集団は前に進むことが出来るのか、
という時の“風”。時には“向かい風”が必要な時もある。
微風、横風、突風、順風・・・。
単に場を和ませよう、あるいは何事もないことを望むのではなく、
あくまでもある目的に動いていくために必要な“風”。
それがどんな風なのかを時々で判断して、風を起こしていくこと。
それこそが、合意形成に最も必要な要素なのだと、
岡野さんは言います。
たとえるなら、集団はヨットのようなもの。
どんな風でも(向かい風でも!)ヨットは進むことが出来るけれども、
凪の状態では絶対に前に進まないのです。
受講生たちは最後に、ワークショップの満足度と、
ワークショップにおける自分の貢献度を点数にしました。
最初に掲げられたテーマ「なんとなく楽しくなるようにする」に、
自分の振る舞いや発言が、どの程度貢献したのか。
また「これは言ってよかったと思うこと」
「これは言わなければよかったこと」
「言ったほうが良かったのに言えなかったこと」も
振り返って言葉にしました。
振る舞いや発言が、すなわち“風”を起こすこと。
今年の17人がこれから、どんな集団になっていくのか。
その中で自分は、どのように振る舞い、どういう居場所を確保し、
仲間とどうやって関係を作っていくのか。
3時間のワークショップだけですべての答えはもちろん出ません。
これからの3ヵ月半の間に、このワークショップをヒントにして
見つけていってほしいと思います。