2005年11月19日

徳永さんのビギナーズ体験(S11)

Beginners' Unit Revisited!、このシリーズもいよいよ
折り返し地点に到達です。もちろん、まだまだ続きます。
さて、第11弾は徳永さんのビギナーズ体験です。
徳永さんは3期(1996年)のビギナーズ受講生で、花田明子さん演出の
「アイスクリームマン」(岩松了作)に、役者として出演されました。

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ビギナーズに応募した時の事は今でも憶えている。
会社の電話を使い、昼休みに中青に電話をした。
その時は募集締め切り間近のため「定員で応募締め切りました」
と言われるのを期待していた。
自分で何かをしようとしたんだ、行動したのだという事を、
その当時付き合っていた『向上心の塊のような彼女』に言いたかったからだ。
結局、担当者からは無情にも「大丈夫です。
男性は少ないのでまだ受け付けてます。」との返事。
電話しておきながら断る事も出来ず、その日の夜に中青で手続きをした。

ビギナーズに参加することになった事を彼女に伝えたが、
「すごいやん! 頑張ってな?」みたいな期待したような返事は
返って来なかった。甘かった。。。
応募のきっかけが彼女に褒めて認めてもらうためなもんだから、
戯曲なんて言葉も知らず、ト書きって何? てな状況で、
ただ目立たないように発言を控え、最初のうちは気乗りもせず
ビギナーズに参加していた。
戯曲も決まり、読み合わせをすると地方訛りが露骨にでて、
演出家や参加者に笑われ、更に参加する楽しさが減っていった。

しかし、彼女になんとしても認めてもらいたい一心で、
参加し続けていく内に仲良くなる人も増え、
徐々にその仲間と会えるのが楽しみで中青に通うようになると、
当初の目的である「すごいやん!」と彼女に言われる事は、
頭の片隅に追いやられ、出来るだけ周りに迷惑をかけずに
終わらせようとする参加方法に変わっていった。
迷惑をかけないためにも、稽古には遅刻しないように、
台詞は出来るだけ人より早く覚えるようにした。

本番当日は緊張した。客入れの曲、ざわめく客席。
自分は知り合いを彼女以外呼んでいない。あの彼女が客席に観に来てる。
緊張は高まっていく。公演終了後に、芝居をやっていた彼女からの
駄目出しが待っている。
ミス・ストイックな彼女に褒められる事は無いだろうと、本番に挑んだ。
台詞は間違えなかった筈である。かんでもいない。
きっかけも間違えなかった。ほぼ完璧に舞台を終わらせた。
自信を持って彼女が待っている受付に行った。
……………いない。………トイレか? ……少し待ってみたが出て来ない。
………まだ客席か? そうかアンケートを書いてくれているに違いない。
………いや、いない。。。
周りにばれないように探し続けた。
早々に帰ったのか? ………そもそも、観に来ていたのか??
彼女は観に来ていたと思うが、今では彼女がどんな事を言ってくれたか覚えていない。
覚えていないのだから、あまり良い事ではなかっただろう。
結局彼女とは、まもなくして別れた。

ビギナーズでは、自分の中で一つのものを完成させたという満足感と、
やりきれなかったという消化不良な気持ちが入り交じった感覚を経験させてくれた。
また、評価されてこそ意味のあるものなのだが、
その時の仲間と作り上げた達成感は、
周りがどう評価しようがあまり意味のないものに感じた。
そんな矛盾が同居したような世界に魅力を感じた自分は、今でも芝居を続けている。
何かを始めようようとする事や、何かを変えたいきっかけなんて人それぞれだし、
こんなんでもいいかな? と思っている自分には、結構満足している。

                                         徳永 勝則

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